アレグラン渡部の観戦記

アレグラン東海代表の渡部が独自の眼で、ゲームを分析します。記録(数字)や考察に関しましては、観たままのものになりますので、公式データではありません。ご了承ください。

EURO2016 Bグループ

2016年6月12日 欧州選手権(UEFA EURO2016)@スタッド・べロドローム - マルセイユ

【B組】 イングランド vs ロシア

                      

[HOME]イングランド システム…4-3(1-2)-3(2-1)

GK 1 ハート

DF 右SB 2ウォーカー  右CB 6スモーリング 左CB 5ケイヒル   左SB 3ローズ

MF 中央 17ディアー  右 20アリ   左 10ルーニー (C)

FW 右 8ララーナ   左 7スターリン   中央 9 ケイン     

「4-3-3」

ディフェンダーは、フラットな4バック。両サイドバックは積極的に攻撃参加。

ミッドフィルダーには、アンカー(⇒バックラインの前でのボール奪取)に⑰、

⑩と⑳インサイドハーフの位置(⇒攻撃の組み立てを担う)。

フォワードは3枚だが、足下の技術と決定力に優れる⑨のワントップ気味。両サイドに⑦と⑧を配置。⑦と⑧はポジションを変えながら、前線で攻撃に絡む形。

 

[AWEY]ロシア システム…4-2-3-1

GK 1アキンフェエフ

DF 右SB 3スモルニコフ 右CB 4イグナシェビッチ 左CB 14V・ベレズツキ(C)               

   左SB 21シェンニコフ

MF ボランチ右 5ノイシュテーター   ボランチ左 13ゴロビン

   サイドハーフ9ココリン   中央 17シャトフ  サイドハーフ左 10スモロフ

FW  トップ 22ジュバ       

「4-2-3-1」

ディフェンダーは、フラットな4バック。

ミッドフィルダーには、2ボランチ(※横並び)に右⑤と左⑬。

サイドハーフは、右⑨と左⑩。トップ下に⑰。

フォワードは、ワントップに、フィジカルが強く競り合いにも強い㉒。

 

《前半》

イングランドボールのキックオフでスタート。

2分、イングランド中央に浮き球のパスが入り⑨がヘディングで競ってこぼれたボールを、後方から走りこんできた⑳がダイレクトボレーシュート。上手くミートできず、左ポスト外に外れる。ビッグチャンスに近い場面ではあった。(●イングランドファーストシュート

5分、ロシア右サイドバックの効果的なオーバーラップから、エイア内に侵入クロスボール入れる(※ディフェンスに当たり浮き球になる)そのボールを中央で㉒が胸トラップからボレーシュートを試みるが、相手ディフェンスの寄せが速く奪われる。ただ、シュートは打てないもののビッグチャンスの場面ではあった。

6分、イングランド⑩の中盤左底から右サイドへの大きなサイドチェンジのパスが通り、それを②がヘディングのトラップで相手と入れ替わり、エリアへ侵入。すぐさまショートクロスを入れ、そのボールを中央で⑧がワントラップシュート。GK正面のためブロックされる。ビッグチャンス。(※コーナーキックに)

8分、イングランド⑩の中盤左底から同サイドの左サイドへ展開。⑦が受け、相手と向き合いながらボールを進め、中央へクロス。そのボールを⑳が中央からヘディングで右へ落とし、⑨がシュートを試みるが、僅かに合わずシュートに至らず。ただ、ビッグチャンスの場面であった。

11分、イングランド、⑨の右コーナーキックファーサイドで⑥がヘディングシュート。GK正面でノーゴール。ビッグチャンス。

16分、ロシア右サイドで得たフリーキックを⑰が中央(ニア)、速いボールを蹴りこみ、④がヘディングシュート。GKキャッチ。

16分、イングランド左サイド⑦がドリブル突破から、ヒールでボールを戻し、そのボールを③が中央、DFとGKの間に速いクロス。⑳がつめていたが、やや合わず。ビッグチャンス。

21分、イングランドのビッグチャンスのシーン。このゲーム最高の崩しの場面

◇21分のプレーの全容

1.左サイド⑦が相手に囲まれながらボールを失わず、中央⑰にパス。

2.⑰が⑧に良い(攻撃のスイッチを入れる)縦パスが入る。

3.そのボールを⑧がワンタッチで右サイド②にパス。(※そのまま右に流れる)

4.②は自分の縦に流れた(走り込んだ)⑧にパス。(※②は⑧を追い越し右のオープンスペースに走る)

5.⑧は中央の⑳にパス。(※⑧は中にスプリント)

6.⑳は右サイドでフリーになった②にパス。

7.②はダイレクトで中の⑧にパス。

8.⑧でワントラップシュート。・・・シュートは惜しくも左ポスト外に外れる。

23分、イングランド右サイド②のスローインを⑨がヘディングで前線に落とし、⑧が中に走り込む⑦にパス。DFラインを突破し抜け出すが、相手ディフェンダーが身を挺してクリア。⑦はシュートには至らなかったが、ビッグチャンス。

34分、イングランド右サイド⑳3人に囲まれながらもボールキープ。そこから中央にゴロの速いクロスを送り⑩が受けワントラップシュート。GK正面。ビッグチャンス。

41分、イングランド中央から⑩が左サイドフリーの③にパス。中央に速いクロス。⑦と⑳の2枚がつめていたが、シュートに至らず。ただ、ビッグチャンスの場面であった。

45分、アディショナルタイムなしで、前半タイムアップ

 

☆前半のデータ (*FK/フリーキック,CK/コーナーキック,S/シュート,OF/オフサイド,BC/ビッグチャンス)

イングランド

FK 7本

CK 6本

S  枠内4本,枠外3本

OF 2回

BC 5回

 

ロシア

FK 5本

CK 0本

S  枠内1本,枠外0本

OF 1回

BC 1回

 

《後半》

両チーム交代なし

ロシアのキックオフでスタート。

48分、ロシア、エリア前右45度の辺りから、⑰のスルーパス。⑨が走り込みエリア内で受け、中央にショートクロス。㉒に渡る直前に相手ディフェンダーがクリア。シュートはできなかったが、ビッグチャンス。

54分、イングランド、エリア前右(約20m)からのフリーキック。⑩が相手の壁を越し、ニアサイド上隅を狙うが、落ち切らずバー上を外れる。ビッグチャンス。(●イングランド後半のファーストシュート

57分、ロシア⑨エリア内右45度からシュート、相手ディフェンダーに当たりノーゴール。(●ロシア後半のファーストシュート

62分、ロシア⑩、エリア外中央(ゴールから約25mほど)で相手ディフェンダーのヘディングクリアのこぼれ球を拾い、右足でポスト右側から巻いてくるような低い弾道のシュート。際どいシュートであったがノーゴール。ビッグチャンス。

70分、イングランド⑩、左からのクロスのこぼれ球に走り込んでダイレクトシュート。相手ゴールキーパー右手一本でファインセーブ。ビッグチャンス。

その後、そのこぼれ球を⑧がエリア内右の角度のない所から、ダイレクトシュートを放つがオフサイド

72分、イングランド先制!ゴール前中央、ペナルティアーク内からのフリーキックを⑰がライナー性のボールを左上隅に蹴り込み、ゴール!!

76分、ロシア⑬⇒⑮

77分、イングランド⑩⇒⑱

78分、イングランド⑱中盤中央で縦方向にパス。⑧がワントラップ(反転して)シュート。ボールはバーの上を外れるが、良いミドルシュート。ビッグチャンス。

79分、ロシア⑤⇒⑧

84分、ロシア⑩⇒⑪

86分、イングランド⑦⇒④

アディショナルタイムは3分〉

91分、ロシア同点!エリア外左45度(※約22m)から㉑がファーサイドへ浮き球のクロス入れる。⑭がヘディングシュート気味のボールをファーサイドへ打つ。⑧が走り込んで膝でシュート。ゴール!!

93分02秒、タイムアップ。トータルスコア1-1でドロー。

 

★後半のデータ (*FK/フリーキック,CK/コーナーキック,S/シュート,OF/オフサイド,BC/ビッグチャンス)

イングランド

FK 8本

CK 0本

S  枠内2本,枠外4本

OF 3回

BC 4回

 警告…⑤61分 ラフ

 

ロシア

FK 5本

CK 4本

S  枠内1本,枠外4本

OF 1回

BC 2回

警告…㉑71分 反スポ

 

◎一試合を通した両チームの特徴

イングランド

・左③右②の両サイドバックの豊富な運動量と攻撃参加

・⑩の中盤底でのゲームメイク、配球能力

(※速いライナー性の正確なサイドチェンジは際立っている)

アタッキングサードでの、複数人が絡み、パス交換を交えながらフィニッシュまで持ち込む技術と戦術理解(攻撃の共通認識)の高さ

・ディフェンスラインの⑥の高さと危機察知能力

・アタッカーとして⑦のスピード、⑧の攻撃センス、両サイドFWに特徴がある

インサイドハーフ右⑳の攻撃の組み立てに参加しながらも、要所で得点機に顔を出す動き

・アンカー⑰の的確なビルドアップ

☆各ポジションに、特徴がはっきりしたプレーヤーが多く、チームとしての完成度は高いように感じた

 

ロシア

・最前線㉒の高さ

・⑩、⑨の両サイドハーフの力強いプレー

・相手の正面のシュートもあったが、ゴールキーパー①のファインセーブが光った

・全体的な身体のサイズ(大きさ)は目立っていた

 

体が大きいが、「動ける」、「走れる」、「(動きに)切れがある」ところ、

“ワンステップで”サイドを変えることができるサイドチェンジのパス、

など、世界のレベルの高さを感じました。

また具体的には・・・

◎トラップの技術の高さ

◎パスのスピード

◎判断の速さ

◎身体接触を受けても倒れないボールの持ち方

◎動きながらのプレーの精度

◎テンポ感のある攻撃

開幕戦に続き、「さすがEURO」という、サッカーの質、レベルの高さを感じました。

 

引き分けの試合結果については、幾つかの要因があるように感じました。

まず、アディショナルタイムで追いつく、「ロシアの諦めない姿勢」は見事でした。

ロシアは、後半立ち上がりから、前半とは違う“修正された姿”を見せ、約15分間ほどは(前半の前線への蹴り込み中心のプレーから一転)、パスを繋ぎ、相手ゴール前に迫る場面が増えました。ただ、そこで得点ができなかったところが悔やまれます。

一方、イングランドの悔やまれるところは、質の高いサッカーができていたものの、決定機に決めきれないところです。(※ゴールはフリーキックの1得点)特にプレミア得点王で、期待のセンターFW⑨は緊張からか、精彩を欠いているように感じました。

このような状況にも拘らずそこで、交代のカードは、ゲーム(攻撃)のコントロール役を担っていた⑩を下げ、⑱を投入というもの。さらに、サイドで突破力のある⑦を下げ、(どちらかというと)守備に定評のある④を投入。

1点差の中で、終盤に逃げ切りを図ったのか、それとも、グループリーグとその後の決勝トーナメントのことを考えて(※主要選手の休息の意味)の交代か、監督の思惑は分からないのですが・・・。

◆決定的な仕事があまりできていない最前線の⑨を最後まで使い続けたこと

◆攻撃のカギを握っていた⑩の交代(交代で入った⑱は、定評通りの巧みさはありましたが・・・)

◆左サイドを、スピードある攻撃で相手ディフェンダーに圧力をかけていた⑦の交代

ベンチワークから生まれたこれらの要因が、ロシアの守備陣の負担が少し軽くなったのではないかと感じました。

 

とにかく、「サッカーの試合は最後まで分からない」という難しさを改めて感じました。

 

イングランドは、先発の約半分がトットナム所属のプレーヤー。

また、ロシアは、先発の約半分がCSKAモスクワ所属のプレーヤー。

ナショナルチームに、同クラブのプレーヤーで占められている状況は、多くが

単一チーム(※バルセロナ)のプレーヤーで占められていた、少し前のスペインを思い出しました。

 

最後に、

「ロシアの⑭キャプテンは、本田圭佑選手とプレーした」

また

「ロシアの⑤(シャルケ)は、内田篤人選手の同僚」

という実況の言葉に、

『ヨーロッパの強豪国同士の真剣勝負の舞台に立つプレーヤーと、

日本代表選手が肩を並べていること』に日本人として誇りを感じました。