アレグラン渡部の観戦記

アレグラン東海代表の渡部が独自の眼で、ゲームを分析します。記録(数字)や考察に関しましては、観たままのものになりますので、公式データではありません。ご了承ください。

EURO2016 開幕戦

2016年6月11日 欧州選手権(UEFA EURO2016)@スタッド・ド・フランス - サンドニ 

【A組】 フランス vs ルーマニア

                      

[HOME]フランス システム…4-3(1-2)-3(2-1)

GK 1 ロリス(C)

DF 右SB 19サニャ  右CB 4ラミ 左CB 21コシエルニ   左SB 3エブラ

MF 中央 5カンテ  右 15ポグバ  左 14マトゥイディ

FW 右 7グリーズマン   左 8パイエ   中央 9ジルー      

「4-3-3」

ディフェンダーは、フラットな4バック。両サイドバックは積極的に攻撃参加。

ミッドフィルダーには、アンカー(⇒バックラインの前でのボール奪取)に⑤、

⑮と⑭がインサイドハーフの位置(⇒攻撃の組み立てを担う)。

フォワードは3枚だが、ポストプレーや足下の技術に優れる⑨のワントップ気味。両サイドに⑦と⑧を配置。

⑦と⑧はポジションを変えながら、前線で攻撃に絡む形。

 

[AWEY]ルーマニア システム…4-4-2

GK 12タタルシャヌ

DF 右SB 22サプナル   右CB 6キリケシュ (C) 左CB 21グリゴレ    左SB 3ラト

MF ボランチ右 8ピンティリー   ボランチ5ホバン

   サイドハーフ20ポパ   サイドハーフ19スタンク

FW  シャドー 10スタンチュ   トップ 14アンドネ        

「4-4-2」

ディフェンダーは、フラットな4バック。

ミッドフィルダーには、2ボランチ(※横並び)に右⑧と左⑤。

サイドハーフは、右⑳と左⑲。

フォワードは、最前線にフィジカルが強く競り合いにも強い⑭と、その周辺を動き回りチャンスメイクする⑩の2トップ。

なお、公式データでは、4-3-3であったが、実際のところは4-4-2と感じた。

 

《前半》

フランスボールのキックオフでスタート。

2分、ルーマニア左サイドからのスローインのこぼれ球を⑧がダイレクトシュート。

ボールはバーの上を越えノーゴール。(●ルーマニアファーストシュート

3分、ルーマニア⑩左コーナーキックを⑭がニアでヘディングで競って、ファーサイドに流したボールを⑲がプッシュ。ゴールキーパーブロック。

そのこぼれ球を⑥がシュート、フランス⑭がブロック。(→コーナーキックに)

4分、ルーマニア⑩右コーナーキックをニアサイドで⑭がヘディングで合わせるが、

バー上に外れる。

早い時間に、立て続けにビッグチャンスを迎える。

◎試合前は、引いてくる予想のあったルーマニアが、立ち上がりにセットプレーから2度のビッグチャンスを迎える。(※引いて守らず、DFラインは高め)

ルーマニアは「高い位置でボールを奪う姿勢」が見られ、「ボールを奪われた後の帰陣も速く」、堅守速攻を高い位置で行っている。

そして、前線から最終ラインまでがかなりコンパクトであった。

(※9分の画面上では、約25mの間に全プレーヤーが収まっていた)

9分、フランス⑮が中盤底の右から左タッチライン付近へ大きなライナー性のサイドチェンジのパスを通す。それを受けた⑧が中へショートパス。それを⑦が受けエリア外からシュートを試みるが、相手DF⑥にブロックされノーゴール。(●フランスファーストシュート

10分、フランスが先のシュート(ブロック)から得た⑧の左コーナーキックのこぼれ球を⑦が⑧にワンタッチパス。⑧が相手DFをドリブルでかわし、中央へクロス。そのボールをニアで⑨がヘディングシュートするがポスト左に外れる。フランス最初のビッグチャンス

13分、フランス⑮が中盤底中央付近でボールを受け、右サイドスペースにスルーパス。⑲が走り込み、ダイレクトで速いクロスを送る。そのボールをニアで⑦が一度シュートミスするが、そのこぼれ球をすかさず自らヘディングシュート。惜しくも右ポストに当ててしまう。

35分、フランス⑲の右サイドでのスローインを⑧が受け、縦にドリブルエリアに迫った辺りで低い弾道の高速クロス。走りこんだ⑦が合わせるも右ポスト外に外れる。両チーム通じての久々のビッグチャンス。

36分、フランス⑧が浮き球ルーズボールを、胸トラップから“ボレーシュート気味”のパスを前線に送る。そのかなり速いボールを、⑨がポストプレー(ヒール)。⑦に落とすが、惜しくもオフサイド。ぎりぎりのタイミングであったが、成功していれば、ルーマニアの高いDFラインを突破し、ビッグチャンスとなるところであった。

アディショナルタイムは2分〉

46分、フランス⑧右コーナーキック、中央で⑨がヘディングシュート。バー上をかすめるように外れる。前半終了前のビッグチャンス。

 

☆前半のデータ (*FK/フリーキック,CK/コーナーキック,S/シュート,OF/オフサイド,BC/ビッグチャンス)

フランス

FK 7本

CK 4本

S  枠内1本,枠外6本

OF 2回

BC 3回

 

ルーマニア

FK 2本

CK 2本

S  枠内1本,枠外3本

OF 0回

BC 1回

警告…⑥31分ラフ,③44分ラフ

 

《後半》

ルーマニアのキックオフでスタート。

46分、ルーマニア⑩後方からの浮き球を上手くコントロールして、ボールキープ。前を向いて少し不利な体勢からではあったが、思い切ってエリア外からミドルシュート。DFにブロックされゴールにならなかった。(●ルーマニア後半のファーストシュート

47分、ルーマニア⑩右サイドエリアの入り口付近でボールを受け、スクリーンターンし、最前線に浮き球のパス。そのボールを、⑲が胸トラップからボレーシュート。右ポスト外に外れる。ビッグチャンス。

51分、フランス⑧中盤中央でボールを受けドリブルで10mほど前進し、バイタルエリア付近から、縦斜め方向にパス。⑨が動きながら受けてワントラップシュート。シュート正面で相手GKキャッチ。ビッグチャンス。(●フランス後半ファーストシュート

55分、フランス⑧左サイドエリア内ドリブル侵入。左足インサイドカットの後、右足で浮き球のクロス。ややマイナス気味のクロスボールを、⑮がダイレクトボレーシュート。相手GKセーブ。ビッグチャンス。

56分、フランス先制!右サイド⑧右足インサイドカットの切り返しから、左足で中央へロングクロス。⑨が相手GKと競り合いながら、ヘディングシュート。ゴール!!

59分、ルーマニア⑩左コーナーキックを、ニアサイドで⑭ヘディングシュート、バーの上を越えてノーゴール。ビッグチャンス。

60分、ルーマニア⑭⇒⑨

61分、フランス、⑧浮き球のフリーキックを相手DFの裏で足を伸ばし、中央の⑮へ折り返し。DFにクリアされ、シュートには至らなかったが、ビッグチャンス。

63分、ルーマニア⑩がエリア内で(ルーズボールの処理時)相手DFと接触時に、倒され、PK。

64分、ルーマニア同点!63分に得たPKを⑲が落ち着いてGK左側に低いシュート。ゴール!!

65分、フランス⑦⇒⑳

71分、ルーマニア⑩⇒⑦

76分、フランス⑮⇒⑪

80分、フランス⑪のドリブルから⑨へパス。ポストプレーから⑪のダイレクトシュート。シュートは、あまりミートせずGKにセーブされるが、ビッグチャンス。

81分、ルーマニア⑳⇒⑪

88分、フランス逆転!左サイドエリア外のゴールから約45度辺りのところで、⑤の縦方向のショートパスを⑧が受け、ワントラップから素早く左足を振り抜きシュート。ライナー性のシュートが左上隅にゴールネットに突き刺さる、目の覚めるようなゴール!!

アディショナルタイムは3分〉

91分、フランス⑧⇒⑱

92分、フランス、相手フリーキックを防いだ後のカウンターを⑱が、長距離ドリブルからシュート。シュートはゴールポスト左に外れるが、ビッグチャンス。

93分58秒、タイムアップ。トータルスコア2-1でフランスの勝利。

 

★後半のデータ (*FK/フリーキック,CK/コーナーキック,S/シュート,OF/オフサイド,BC/ビッグチャンス)

フランス

FK 5本

CK 1本

S  枠内5本,枠外1本

OF 2回

BC 6回

 警告…⑨68分ラフ

 

ルーマニア

FK 3本

CK 2本

S  枠内1本,枠外4本

PK 1本

OF 1回

BC 3回

警告…⑳77分ラフ

 

◎一試合を通した両チームの特徴

フランス

・相手DFの「高いラインの裏」をつくパス(⇒それを受けようとするFW)

・⑮の中盤でのボールコントロールと、サイドを変える大きなパスやスルーパス

・⑤の危機察知能力と広い守備範囲、ボール奪取能力の高さ

・⑨の高さ、ボールキープ(※前線での起点になっている)

・サイドチェンジを使い、ピッチを広く使う攻撃(※キックの精度が高い)

・⑦、⑮とビッグクラブで活躍しているプレーヤーを下げて、若いアタッカーを入れる大胆なベンチワーク

 

ルーマニア

・前線からの強いプレス(⇒要所でプレスバックが利いている)

・バックラインの位置高く、コンパクト

・バックラインを下げて、“引いてカウンター”のスタイルではない

・ゴール前での守備ブロックが堅固

・攻守の切り替えのスピードが速い

・攻撃の手段がない時が多いが、はっきりとしたかたちで攻撃が終わる(⇒相手のカウンターを警戒し、シュートやクロスなど“はっきりしたプレー”をやりきる)

 

「さすがEURO」という、技術の高さ、攻守の切り替えの速さ、球際の強さを感じました。

特に『パススピードの速さ』と『ボール奪取時の身体の寄せの力強さ』は、印象的でした。

主要クラブで活躍しているフランスのプレーヤーは、想像通りの技術の高さがありました。

その高い個人技術がかみ合った瞬間は、観る者をうならせました。

一方、ルーマニアの一歩も引かない姿勢、プレースタイルにも感心させられました。

後半終わりごろに、少しラインが下がり受け身に回るところもありましたが、全体を通して、“積極的な試合運び”ができていました。

また、前後半の立ち上がりは、先にシュートを放つ、ビッグチャンスを作りだすなど、主導権をつかもうとする姿勢がありました。

個の力に秀でるフランスに対して、一歩も引かないルーマニア

フランスの先制点から8分後にルーマニアが同点に追いつき、引き分けの雰囲気も出始めた後半の終盤に、フランスが逆転。

ホームの期待を大きく背負うフランスチームのプレッシャーは、かなり大きいものがあったことが想像されます。

激しいプレッシャーの中で、仕事をやりきったことへの嬉しさや安堵感からか、(88分に逆転ゴールを決めた後)アディショナルタイムにベンチに下がるパイエ選手⑧の眼には涙がありました。

大味ではなく、とても引き締まった好ゲームでした。